更年期は人生の転換期。女性では、誰もが必ず経験する閉経という大きなイベントの前後約10年間のこと。エストロゲン(女性ホルモン)が急激に減少する体内の変化に適応する期間です。
女性にもテストステロン(男性ホルモン)が分泌されており、その量はエストロゲンの約10倍。女性ホルモン中心の生活が終わり、テストステロンに影響を受ける新しい生活への過渡期でもあります。
「更年期のつらい症状の後には、身体が男性化するの?」。いえいえ、女性のテストステロン量は男性の10分の1〜20分の1。女性らしさがなくなるわけではないのでご安心ください。その後をどう生きるかはあなた次第です。
シニア女性が新しい趣味を見つけたり、友達と旅行に出かけたりと、やる気がみなぎり活動的になるのは、相対的に高まったテストステロンの良い影響。女性のみなさん、更年期の先には楽しいことが待っていますよ。
一方、男性の場合は少し違います。テストステロンは20代をピークに加齢とともに緩やかに減少していきます。閉経のようなイベントがないので、多くの男性は更年期を自覚せず過ごすことができます。また、十分な睡眠をとり、定期的に運動し、食事に気を付けて体調管理をすれば、テストステロンを保ち、更年期症状の発症を自分で予防することもできます。
ただ、生活習慣、仕事や家庭環境の変化などがあれば、テストステロンが急に低下し、30代後半以降、どの年代にも更年期症状が起こる可能性があります。女性と違って男性更年期には終わりがなく、代わりに補ってくれるホルモンもありません。つらいときは我慢をせず、助けを求めることが必要です。
「オギャー」と人生が始まり、思春期、青壮年期を過ぎて、更年期、そして老年期。一生の節目節目で、身体的、精神的に影響を及ぼす「性ホルモン」。その増減によって引き起こされるさまざまな症状に対応するのが、泌尿器科であり、婦人科です。みなさんの一生の面倒を見させていただきます。困ったときにはどうぞご相談ください。
この欄は今日で終わり。更年期をうまく乗り越えるためのヒントになったなら幸いです。
(寄稿:2023/10/09付 西日本新聞朝刊)
コメント