「昨日ザギンでデルモとシースー。おかげでゲルピンさ」「ルナドッホ」。どんな業界にも仲間内で使われる独特の言葉があります。ちなみにこれは芸能界で「昨日銀座でモデルとおすしを食べて金欠だよ」「なるほど」の意。
手術の患者さんや、重症の入院患者さんの体の状態を把握する大切な指標の一つが尿量です。尿量を測るために患者さんの尿道から膀胱(ぼうこう)へカテーテル(管)を入れます。ところがなかなか入らない場合、このような声が上がります。
「ウロの先生呼んで!」
医療業界でウロとはそう、私たち泌尿器科(Urology)のこと。いつも素早く駆け付けられるよう、私が前にいた福岡大病院の泌尿器科医はスニーカーを履いていました。また、藤原紀香さん主演のドラマ「ギネ 産婦人科の女たち」のタイトルにもあるように、ギネは産婦人科を指します。
ウロとギネがくっついた「ウロギネ」という言葉を、最近よく目にします。ウロギネ外来は泌尿器科と婦人科の境界領域にある病気を治療する診療科で、「女性泌尿器科」ともいいます。女性のシモのお悩みが専門です。
ところで女性は排尿の後、どんな拭き方をしているのでしょう。肛門がある後ろから前に拭くと雑菌が膀胱へ入りやすくなるので、前から後ろに拭く人が多いかもしれません。でもちょっと待って。ウロギネ外来のお勧めは「下からじっと押し当てる」です。トイレットペーパーを手に取り、尿道口辺りに優しく当てて、乾くまで尿を吸い取る。目安は5秒。ペーパーを動かすと、くずが尿道や膣(ちつ)に入り込んで炎症を起こします。
繰り返すと、排尿後すっきりせず、尿が近くなったり我慢しづらくなったり。特に更年期で女性ホルモンが低下すると、尿道口周囲の粘膜が薄くなって傷つきやすくなります。尿の拭き残しや炎症は排尿トラブルや臭いの原因です。
下着が臭うと悩んでいる女性は少なくないようです。そんな人は「ペーパーは動かさず、下からじっと押し当てる」を試してみてください。それでも解決しないときはウロギネ外来へ、ぜひ。
(寄稿:2019/08/17付 西日本新聞朝刊)
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