「俺は断然お尻が好き」「いやいやおっぱいが最高」。昔の男ばかりの宴席では、尻派と胸派の間で熱い議論が交わされたものです。ところが最近は「女性の胸とお尻、どっちが好き?」と尋ねようものなら「セクハラですよ」と返される恐れがあるので、注意が必要です。
思春期を過ぎて大人の体になると、男女で体の差が目立ってきます。その特徴的な部分が女性の乳房の膨らみであり、後ろに突き出たお尻です。女性特有の体形の強調は、「私は女性です」という女性性のアピールになり、男性はその部分に「性信号」を感じてしまいます。女性が前かがみになったとき、ブラウスの中の胸の膨らみが見えそうになってドキッとしたり、タイトスカートの女性のお尻に目がくぎ付けになったり。性差がある女性の部位は、男性にとって性的な意味を持っています。
TPOという言葉があります。Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)の頭文字を取った、時と場所、場合に応じた態度や服装の使い分けを意味する和製英語です。性差を強調するときは、このTPOをわきまえることが大切です。
私は性教育の出前授業で、中高生にこんな話をします。制服のスカート丈は大抵「膝が隠れる長さ」と決められていますが、怖い先生がいなければ、多くの女子がおしゃれを意識してミニスカートにしています。でも太ももを見せれば見せるほど、男子は性的なものを感じます。学校は勉強や運動をする所で、性的アピールをしたり、性信号を受け取ったりする場所ではありません。TPOを外しているので注意されます。決してブラック校則ではないのです。
サザエさんの妹のワカメちゃんがミニスカートでも校長先生に叱られないのは、性的アピールのない思春期前の子どもの体だからです。しっかり区別が必要です。
この話を聞くと「高校生らしくないから駄目だ」といった先生の曖昧な説明に不満を持っていた女子生徒たちが納得してくれます。それでも制服の短いスカートがなかなか減らないのが、もどかしいところですけどね。
(寄稿:2019/04/01付 西日本新聞朝刊)
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