2024/05/20 思春期に「思春期までに・・・」を投稿いたしました

ぼうこうは「心の窓」です

 不思議と今でもはっきり覚えている光景があります。「息子が小便が近うなっとっとですが、病院に連れて行った方がよかですか」「昼間だけなら放っておけば治るよ」。親戚の集まりの際、父と内科医の大伯父が縁側で交わしていた会話です。私が小学校低学年の頃だったと思います。

 担任の先生やクラスが替わる新学期、運動会や発表会の練習が始まる時期などに急におしっこが近くなる場合があります。さっき行ったと思ったら、またおしっこ。排尿痛はなく、何かに集中しているときや夜寝ているときは症状が出ないのが特徴です。

 これは、子ども心に感じている緊張やストレスが症状として表れた「心因性頻尿」です。繊細でデリケートな子どもに多いといわれています。通常はクラスに慣れ、行事が終われば治ります。放っておかれた私も、いつの間にか元通りになりました。

 心因性頻尿は大人にも起こります。試験だ、バスにはトイレがない、会議中に行きたくなったらどうしよう、夜起きたくない…などの不安で脳が敏感になって、より尿意を感じやすくなります。「まずい。したくなった」と思った途端、ますますしたくなる。一度そんなことを経験すると余計に心配。怖くてバスに乗れなくなるなど生活に支障が出てきます。

 これからの時期は寒さも要注意。冷えも頻尿の原因です。水道水の流れを見たり音を聞いたりと、排尿を連想させるものでも尿意が起こります。「水を飲むとトイレに行きたくなる」と思っている人は、その思い込みが尿意につながっているのです。ぼうこうは「心の窓」と言えるでしょう。

 ではどうすれば頻尿の心配をしなくて済むのでしょう。使い捨てカイロなどで体を温めるのも一案です。それでもお困りのときは泌尿器科医に相談を。不安を和らげる薬やぼうこうを鈍感にする薬など、原因に合わせて対応します。

 繊細だった少年も、今ではいろんなことにずぶとくなってしまいました。飲み会でトイレに立つ人を尻目に、一度も排尿をせずに帰宅できるのが、私のひそかな自慢です。

(寄稿:2018/12/03付 西日本新聞朝刊)

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