命の誕生に立ち会う職種の人たちは,命の誕生と命をつなぐことのすばらしさを強調する場合があります。確かにつながれた命は尊いものですが,だからといって望んでも,環境が整っていても,すべての人が命をつなぐことができる訳ではありません。それなのに,「どんなに美人で仕事ができても,30代以上,未婚,子なしは女の負け犬」と,何にでも勝ち負けをつけて区別しようとされて,悔しい思いをしている人も多いかもしれません。
命をつなぐということは,命の設計図である遺伝子を次の世代に引き継ぐということです。自分の子供には半分の遺伝子が引き継がれます。2人の子供がいれば,自分一人分の遺伝子が引き継がれます。それでは,子供がいない人はどうでしょうか。もし,あなたに子供がいなくても,兄弟姉妹が2人いれば,または,甥姪が4人いれば,あるいは,いとこが8人いれば,あなた一人分の遺伝子が引き継がれるのです。親戚は確実にあなたの遺伝子のいくらかを持っています。だから,命をつながなかったからといって,子供がいないからといって,引け目を感じる必要はありません。「夫の優秀な遺伝子を残したい」とアメリカで代理出産をしてもらった芸能人夫婦がいました。でも,何もそこまでしなくても,遺伝子は残っていきます。
以前は,親戚の人が近所に生活しており,すれ違う人の中には遺伝子を共有している人がいたので,周りの人に親切にすれば,結局自分の遺伝子を労ることになっていました。現在では移動距離が広がり,近くに住む親戚の数は少なくなりましたが,それでも自分の周りには遺伝子を共有している人がいるかもしれません。情けは人の為ならず。誰にでも親切にすることは自分の遺伝子が生きやすくなることにつながります。
ある病院の飲み会で,酔いにまかせて看護師さんたちにこんな話をしていたとき,帰り際,師長さんに呼び止められました。師長さんは,看護一筋30年の厳しい方で,縁あって数年前に結婚しておられました。
先生,私ね,若いときから仕事が一番と思ってやってきたけど,ある年齢になったときから,なんで若いときに結婚しなかったのだろうと思うようになったの。子供がいなかったことを引け目に感じていたのよね。でも今日の話を聞いて,ちょっと楽になったかなぁ。もっと早く教えてくれれば良かったのに
子供がいないからといって,負け犬でも負け組でもありません。勝ち負けで判断しようとすることが間違っています。大切なことは生きる姿勢です。
コメント