マスターベーション
マスターベーション(自慰)は,自分一人でペニスやクリトリスなどを刺激し,性的に興奮して満足感を得ることです。とくに男子の場合は,精通を経験するとほとんどの人がマスターベーションを行うようになります。
「せんずり」や「マス(を)かく」とか,「オナニー」と呼ぶこともあります。ただ,オナニーは膣外射精に由来する言葉なので,最近ではあまり使われなくなっています。
マスターベーションをすることは悪いことではない
もう50年ほども前のことです。
性的欲求をスポーツや芸術活動などの社会的に価値あるものに置換すること,すなわち昇華することが良いことである。コソコソマスターベーションばっかりせず,もっと部活や勉強に頑張れ
私が高校生の頃にはこんなふうに教えられていました。とくに男子に対しては,マスターベーションは様々な「病」の誘因になるとするマスターベーション有害論を前提として学校や家庭での監視の必要性が主張されていた明治時代の名残が,昭和40年代の当時にもあったのかもしれません。けれども私を含めた高校生はコソコソしていました。
「またしてしまった」とか,「欲望に負けた」といった後悔と罪悪感がほんの少しはありました。それからいろいろな都市伝説に対する心配と不安もありました。
けれでも,人の一生で性的欲求が一番高まる時期にばく進中の高校生にそんな授業をされたって,思春期のまっただ中から人知れず繰り返していよいよ佳境を迎えようとしている秘め事をそう簡単には昇華することができません。
昇華するのが難しかったのは,何も私だけではありません。男子の95.8%,女子の54.2%はマスターベーションを行っているとの報告があります。また,未婚男性の75.4%は,毎日〜週に1回の頻度でマスターベーションを行っているとの報告もあります。みんなもコソコソしているのです。
誰もが行っている行為ですから,最近ではマスターベーションについて肯定的に語られることが多くなっています。自分の体を触ってみて,どのような反応が起きるのか,どのように触ると心地よいのか,このようなことを知ることはとっても大切なことであり,マスターベーションはこのためにも役立ちます。
また,二次性徴を迎えると,急速に成長する体の変化とともに性衝動にこころが揺さぶられるようになります。とくに男子では10代後半から20代前半の時期に最も性的欲求が高まります。この衝動をうまくコントロールできなければ,いらいらが募り暴力的な行動の誘因となる場合があります。そのとき,性的欲求をコントロールする手段として,マスターベーションはもっとも良い方法です。それから,射精までの感覚の変化を学習することで,射精の調整が可能になります。
男子の場合,性衝動のコントロールなどについて学習する機会もなく,戸惑う生徒は少なくないと思われます。保健室で男子生徒から『自分は汚い人間だ』と,性衝動を抑えられず異常な行動をしている(と思っている)ことの相談を受けることもありますが,全く正常なことでも,純粋すぎて,自己否定をする生徒の存在に触れ,男子の性教育の必要性を感じます
ある高校の養護の先生より伺った話です。そうなんです。マスターベーションは肯定的に語られるようになったのですが,その意味や回数・方法については全く教えられていないのです。
ウッ,ウッ,ウッ,ムラムラしてきた
私が大学浪人時代の同じ下宿のS先輩,予備校の授業中にこんなことを言い残しては,歩いて数分の下宿へ帰っていき,しばらくすると,スッキリした様子で戻ってきては,また一生懸命ノートを取っていました。1日に数回そんなことをする日もあったのですが,見事第1志望の大学に合格されました。悶々と過ごす夜が多かった私と違い,夜遅くまで点いていた部屋の明かりの下で,S先輩は性的欲求を上手にコントロールしながら勉強されていたのだろうと思います。
マスターベーションは,「自分の楽しみ」
そして、「性欲をコントロールする手段」
マスターベーションをすることは悪いことではありません。それが1日数回になったとしても,それも多くの人が経験しています。大切なのは自分の性的欲求をコントロールできることです。自分のペースでマスターベーションをしてください。
マスターベーションの回数が多いからといって心配しなくてもよいのですが,それでは,逆の場合はどうなのでしょうか。
高校2年になったけど一度も射精したことがない
マスターベーションなんて月1回もしない,女性の裸もそんなに見たくない
このような人は,男性ホルモン不足かもしれません。一度泌尿器科でご相談ください。
男子のマスターベーションに関する都市伝説
マスターベーションをしてくださいと言われても,マスターベーションに関するいろいろな都市伝説,心配になりますよね。「頭(成績)が悪くなる」,「髪が抜ける」,「回数が過ぎると赤玉がでて打ち止めになる」,などなど。本当なのでしょうか。
マスターベーションをしても頭(成績)は悪くなりません
株式会社TENGAが行った独自アンケートの結果を紹介します(対象:大学在学中または大学卒業生,回答人数152人)。
- 大学受験の理由でマスターベーションを止めた,または控えたことがありますか
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- 増えた 23.0%
- 以前と変わらず 48.0%
- 控えた 18.4%
- 行わないようにした 7.2%
- 別の理由で頻度が減った 3.3%
- 受験前の半年間でどれくらいの頻度でマスターベーションを行いましたか
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- 1日2回以上 18.8%
- 1日1回 28.5%
- 3日に1回程度 29.2%
- 週1回程度 4.2%
- 2週間に1回程度 2.8%
- 月1回程度 9.7%
- 月1回より少ない 6.9%
- 大学受験時,周囲にマスターベーションを控えた友人がいますか
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- いない。みんな気にせず行っていた 33.6%
- いる,成績に影響はなかったようだ 30.3%
- いる,成績も上がったようだ 13.2%
- 友人とマスターベーションの話をしないので知らない 23.0%
- マスターベーションで頭が悪くなるという噂を聞いたことがありますか
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- 聞いたことはあるが信じない 42.8%
- 聞いたことがあり信じる 11.8%
- 聞いたことがあり不安 2.0%
- 聞いたことはない 43.4%
アンケート結果をみると,都市伝説を信じて不安を感じている人もいますが,多くの人たちは自分のペースでマスターベーションを行っていたことがわかります。それも半数近くの人が毎日。そうして大学受験に見事合格しています。「したい,でも成績は悪くなりたくない」と我慢をすれば性的欲求のもやもやした気持ちに包まれます。そんな中での勉強よりもマスターベーションで性的欲求をコントロール,スッキリした方が勉強がはかどるのではないかと思います。
ところで,私の高校時代を振り返ってみると学年が上がるごとにマスターベーションの回数は増加し,それと逆相関して成績は低下傾向を示していました。あたかも都市伝説を肯定するような結果ですが,実は,その頃は恥ずかしながら“逢えば又せつなくて,逢えなけりゃ悲しくて”の状態で勉強に身が入らなかったせいなのであります。この時期の成績への影響は,マスターベーションよりもこちらの方が大きいように感じます。
恋の悩みにご用心
マスターベーションをしても髪は抜けません
「マスターベーションをすると,髪に大切な成分であるタンパク質と亜鉛が精液として体外に射出されてしまうので,これらが不足して髪が抜けやすくなる」って,本当でしょうか。たしかに精液にはタンパク質と亜鉛が含まれています。とくに亜鉛はセックスミネラルと言われるほどですから,一見辻褄が合っているような・・・。
それでは,亜鉛とタンパク質はどのくらい含まれているのでしょうか。
精液には亜鉛が5〜23mg/100ml,タンパク質が3500〜5500mg/100ml含まれています。1回の正常な射出精液量は1.5ml以上です。仮に射出精液量を3mlとすると,1回の射精で亜鉛0.15〜0.69mg,タンパク質105〜165mgが体外に出ていきます。
一方,みなさんは通常1日平均亜鉛を9mg,タンパク質を50g食事から摂取しており,亜鉛は体内に約2000mg存在しています。精液に最大量含まれていたとしても,1回の射精で,亜鉛は体内量の2000分の1以下,タンパク質は摂取量の300分の1以下が出ていくに過ぎません。
このように摂取量や体内量と比較しても精液に含まれる量は微々たるもので,毎日マスターベーションをしたからといって体内の栄養バランスが崩れて髪に悪い影響が出ることはありません。心配ご無用です。
それからもうひとつ,「マスターベーションをすると男性ホルモンが増えるので,その影響で髪が抜ける」と言われることがあります。なにかもっともらしいです。
成人男性によくみられる,思春期以降に額の生え際や頭頂部の髪が薄くなる状態は,男性型脱毛症と呼ばれています。この原因は,男性ホルモンの仲間であるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛根に作用するとヘアサイクルの成長期が短くなり,髪の毛が長く太く成長する前に抜けてしまうためということが分かってきました。たしかに男性ホルモンと髪が抜けることには関係があるのです。でも,これまた心配ご無用です。マスターベーションやセックス,運動などで男性ホルモンの主役テストステロンが増加します。しかし,これは一過性の変化で,5α還元酵素によってテストステロンからつくられるDHTがドンドン増えるわけではありません。みなさんの周りをよく観察してみて下さい。髪が薄い人のお父さんも薄くはないですか。そうなんです。薄くなるかどうかのもうひとつの要因が遺伝です。だから,マスターベーションをしたからといって,そのせいで髪が抜けることはありません。安心して性欲コントロールをして下さい。
ただ,おじいちゃん,おとうさんの髪が薄ければ,もちろん遺伝を受け継いでいる可能性が高くなりますから,その場合は,マスターベーションをしようがしまいが,薄くなるかもしれませんので,あしからず。
マスターベーションの回数が多いからといって赤玉が出て打ち止めにはなりません
「男性は一生のうちに射精できる回数が決まっていて,その回数に到達すると最後に赤い玉が出て,その後は射精できなくなる」なんていう都市伝説を心配している人も多いようです。これは,昔パチンコがまだ手打ちだった頃,パチンコ台には決められた量しか玉が入っていなかったので,玉が出尽くしたら打ち止め終了となっていました。その際最後に出てくるのが赤く塗られた玉で,打ち止めの目印だったそうです。
それに喩えてマスターベーションの回数が過ぎると赤玉が出るぞと,回数の多い若者に対する冗談なのか,マスターベーション有害説に基づく脅しなのか,そんなところから出てきた根拠のない口承です。
1日複数回のマスターベーションをしていたって,これも心配ご無用,赤玉が出ることはありません。
ただ,精液が膀胱へ逆流してしまい,射精した感覚があるのに尿道口からは精液が出なくなってしまう逆行性射精という状態が起きることがあります。また,血が混ざって精液が赤くなる血精液症という疾患があります。どちらもマスターベーションの回数とは無関係ですが,そのようなことがあれば泌尿器科にご相談下さい。おじさんもこっそりやっています
マスターベーションの回数が多くてもテクノブレイクは起こしません
テクノブレイクに医学的根拠はありません。ご心配なく。
おじさんもこっそりやっています
マスターベーションは若者の特権とか,パートナーのいない人が寂しく行う行為というイメージがあります。
確かに若者がマスターベーションを行う理由には,性的な興奮を静め,性的な快楽を得,リラックスするためなどの理由とともに,性行為の相手がいないからという理由が上位にあります。はたしてマスターベーションは若者だけの特権,若者だけの寂しい行為なのでしょうか。
いいえ,実はおじさん以上の世代も結構やっているのです。40代の75%,50代の64%,60代の46%,70代の36%が月1回以上のマスターベーションを行っているようです。もちろんパートナーがいる人も含まれていますし,週2回以上の性行為がある人でも36%がマスターベーションを行っているそうです。つまり,マスターベーションは若者だけの寂しい行為ではないのです。
パートナーがいるのにマスターベーションをする理由は,相手に拒否されたからという場合もありますが,多くは若者と同じです。
パートナーとの性行為のことを考えて逢う前日にもマスターベーションを行うことが多い
毎日性行為を行っているので,マスターベーションをする必要がない
性的快感は得たいけど,性行為がうまくいかなかったら困るから(射精をすると勃起が不十分になることがある),性行為のありそうな日の3日前からマスターベーションはしない
なるほど,それぞれの言い分が理解できるような・・・。
おじさんたちは都市伝説なんて怖くありません。だってそんなこと,心配したり不安に思ったりする必要がないとおじさんになって分かったからです。そしてみんな,今でもこっそりやっています。ただし,あなたが不満なのではありませんので,もしそんな姿を見かけたとしても,パートナーの方々大目に見てください。
マスターベーションの方法
マスターベーションをすることは,まったく悪いことではないのですが,その方法に注意が必要です。
最近我々医療関係者の間で問題になっていることに,膣内射精障害があります。これは,性行為の時に膣内で射精できない状態のことです。早漏よりましだと思った人もいるかもしれませんけど,案外こちらも深刻です。だって,男性にすれば興奮はしているのにゴールにたどり着けないのですから,蛇の生殺し状態です。ご夫婦であれば,子どもがほしくても射精できないので妊娠できません。パートナーは,「なぜ?私が悪いの?」と悩んでしまいます。二人の関係に悪い影響が出るかもしれません。
この膣内射精障害の原因の多くは,マスターベーションの方法の間違いです。
手で刺激するのではなく,布団のシーツや畳にこすりつけている
なんでこんなことするのっていったって,性行為にできるだけ近い状態(自分の手で刺激せずに)で射精したいから。けれども,膣内の環境とかけ離れた布などの感触で射精する癖が付いてしまうと,その刺激でないと射精できなくなります。
ペニスを強く握りすぎている
2回目のマスターベーションで射精するときは1回目より強い刺激,3回目はさらに強い刺激が必要になり,そのため強く握ることが習慣になってしまうと,膣から受ける刺激が物足りなくなります。「彼女のがゆるい」なんて言わないように。女性のせいではありません。あなたの握りが強すぎたのです。けれども,おむすびの作り方とは違って,ペニスの握り方なんて誰も教えてくれないですからね。
いつも足をつっぱっている
直前,できるだけ我慢した方が射精時の快感が大きいですよね。だから,尿が漏れないようにするのと同じように尿道括約筋を閉め,お尻の筋肉(大臀筋)を収縮させて,さらに足をピーンと伸ばして太ももの筋肉(大腿四頭筋)に力を入れて限界まで我慢する。そんなことを繰り返していると,このような足をピーンとつっぱった状態でなければ射精できなくなってしまいます。また,勃起を維持させようとして肛門を閉め太ももの筋肉を緊張させている人も同じです。
いずれも変な癖で,一度そうなってしまうと治すのに一苦労します。もし,上記に類似した方法でマスターベーションをしている人は,早急に修正するようにいてください。マスターベーションをするときは,自分の手でペニスをゆで卵がつぶれないような強さで握り,ペニスに沿ってさするように刺激してください。
「スジの周りが一番感じるけん,皮を下げてここば刺激すっと気持ちんよか」と,高校1年のとき同級生のS君が教えてくれたことを今でも覚えています。亀頭と包皮をつなぐ包皮小帯と呼ばれるスジの周りには確かに感じる神経が分布しているので,ここを中心に刺激するのもひとつの方法ですから試してみてください。ただし,ギュッと握りすぎないように,強く刺激しすぎないように。
マスターベーションの“オカズ”
マスターベーションを行うときには,いろいろな想像をして興奮を高めていると思います。この興奮を高める材料が“オカズ”と呼ばれています。男性であれば,好きな女性や特定のアイドルとキスや性行為をしていることをイメージするとか,女性であれば好きな人とのデートやドラマなどのロマンチックな情景をイメージしたり。でも想像だからといってどんな内容の空想でも良いというわけではありません。
- 気分が良いときに行う
- 自分一人で行う
- 愛情を伴う空想をする
- 公衆の面前で行う
- 腹が立っているときや気分の悪いときなどにイライラ解消のために行う
- 暴力的な空想や不適切な相手に対しての空想をする
アダルトビデオを見ながらマスターベーションを行う人もいるでしょう。画面を見ながら性行為の疑似体験をするわけですが,そのときのビデオの内容が,「性的に露骨で,かつ女性を従属的・差別的・見世物的に描き,現に女性に被害を与えている表現物」であった場合,相手を愛しみ親密で官能的な関係性のある「性」を知ることが難しくなるといわれています。
例を挙げれば,それが相手の同意を得ずに行う暴力的な性を描いているもの(痴漢,のぞき,強姦など)や思春期前の小児を性の対象にしている内容であれば,それを見ながらのマスターベーションは間違った方法に当たります。もし,性暴力のパターンの行動や空想でマスターベーションを繰り返せば,逸脱した性嗜好と性的快感の関係が強化され,認知のゆがみにつながります。例えば,暴力的な性行為を彼女も喜ぶはずだ,暴力的な性行為をしてもたいした問題ではない,などの誤った考えは,周囲の出来事に対して,間違ったとらえ方をし,間違った選択から間違った行動を起こすようになります。この間違った反応パターンを繰り返すことによって,性嗜好が逸脱し,性犯罪につながる危険性があります。
“食事のおかずは好き嫌いなく食べましょう”ですが,“マスターベーションのオカズ”は好みであってもダメなものはダメなのです。ご注意を!
性犯罪に及ぼすポルノグラフィーの影響は,性犯罪にかかわる専門家の間でも長きにわたって論争が続いている問題です。性犯罪者のポルノグラフィー使用についての検討では,性犯罪者が非犯罪者と比べてポルノに接触した年齢が早いとか,異常だったという差はなかったそうです。ただ,小児わいせつ犯の再犯を検討したところ,ポルノの使用が多いほど再犯率が高いという調査結果があります。また,逸脱したポルノを見る人は,見ない人に比べて再犯する危険性が高く,性暴力へのリスクレベルが低い人にもネガティブな影響を与えることが報告されています。さらに暴力を描写したポルノは,暴力的ではないポルノより性暴力を引き起こす危険性が高いことも指摘されています。
- 性犯罪者と非犯罪者で,ポルノに接触した年齢,異常なものだったかどうかで,差はなかった
- 小児わいせつ犯で,ポルノの使用が多いほど再犯率が高い
- 逸脱したポルノを見る人は,見ない人に比べ再犯の危険性が 高い
- 暴力的ポルノは,暴力的ではないポルノより性暴力を引き起こす危険性が高い
つまり,ポルノ,とくに暴力的なものは性暴力にネガティブな影響を及ぼす危険性が直接的にも間接的にもあるということです。
誰もが性暴力を振るうわけではありません。そこには高い壁があります。それを乗り越えて性暴力を振るう人は限られています。多くは壁を乗り越えることはできません。ただ,壁の前に踏み台を置けば,統計的に有意差が出なくても壁を乗り越えられる人が出てきます。ポルノは,その踏み台になっているのです。踏み台があれば,また壁を越えてしまいます。けれども,踏み台がなければ,一度越えた壁でも越えられなくなります。
“オカズ”を見つけたら
家族が部屋を掃除していて,偶然アダルトビデオやヌード写真など,通称“オカズ”と呼ばれるものを目にしたとしても,慌てず騒がず,見て見ぬ振りをしておきましょう。思春期になり,性への興味が増してきた表れです。ただ,容易に誰の目にも触れるところに置いてあったとしたら,それを誰もが好きなわけではなく,なかには嫌悪感を抱く人もいるので,「使った後はきちんと片付けなさい」と一言注意が必要です。もし,それが,相手の同意を得ずに行う暴力的な性を描いているもの(痴漢,のぞき,強姦など)や思春期前の小児を性の対象にしている内容であれば,ちょっと心配です。「こんなのを見ていたら性暴力(性犯罪)につながるらしいよ」と説明して,暴力的ではない内容のものに誘導してください。
最近ではインターネットの動画サイトを利用する人が増えており,そのため,どんな“オカズ”が好みなのか,周囲で気付くことが難しくなってしまいました。けれども例えば,公園で小さな子どもを見つめていることがある。通りですれ違った子どもを振り返ってまで追っている。そんな仕草に気付いたら,小児に興味があるのかもしれません。
2017年3月千葉県で起きた小3女児殺人遺棄事件。逮捕された保護者会会長は,以前働いていた飲食店の同僚に「小学生,中学生くらいの娘が好き」と公言し,自宅には小中学生のイメージDVDが多数収集されていたそうです。性的な意味で思春期前の子どもが好きという発言があれば,「冗談だろう」とか「変わっているね」ではなく,一発レッドカードです。「俺は小児性愛だ」と言っているのですから,要注意人物,要観察になります。「それおかしいよ。病院に相談したら」と精神科などの医療機関受診をすすめたり,その地区の警察や学校へ情報を流しておいた方が良いでしょう。
後始末
マスターベーションの後始末も大切です。精液を受けたティッシュやトイレットペーパーは,トイレに流せるものは流し,流せないものは液や臭いが漏れないように袋に入れてゴミ箱へ捨てましょう。若いときは飛距離がでます。座ってしていたら顔にかかったとか,仰向けでしていたら天井に届いたとか,自慢しているのを聞いたことがありませんか。どこまで飛んだかを競っても何にもならないのですが,若いときには思った以上に飛んでしまって受けきれずに周りに飛び散ることがあります。その時は飛び散った精液を丁寧に拭き取っておきましょう。他人の精液を見たり触ったりするのは気持ちのよいものではありませんから,きちんと後始末をすることがマスターベーションのマナーです。
それから,マスターベーションの後,そのまま眠ってしまえば問題ありません。けれども,すぐに出かけたり,人に会うときは注意が必要です。尿道内に残った精液が,しばらくして尿道口よりにじみ出ることがあります。とくに夏の季節で薄い生地の下着やズボンをはいているときは,にじみ出た精液でズボンにシミができてしまい,ちょっと格好悪いことになります。そんなときは,尿道口のところにティッシュなどを当てておいた方がよいかもしれません。
最後に
「自然に覚えることだからマスターベーションの方法なんか教える必要がない」,「マスターベーションは個人の楽しみだから,それぞれが好きなようにやればよい」と考える人もいるでしょう。けれども,困ったことになったと自覚するときには,状況はかなり深刻になっているのです。ほとんどの男性は女性と性行為をしているところを想像しながらマスターベーションを行っています。将来,女性と性行為をして射精したいのです。しかし,そう思って行うマスターベーションの方法が原因で膣内射精障害になるとすれば,それはやはり間違った方法です。このようなことも思春期のうちにぜひ知っていてほしいと思っています。
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