夜間睡眠時勃起・早朝勃起は男の生理です。
勃起って?
男子が「立つ(勃つ)」と呼んでいる勃起は,ペニスの中にあるスポンジ状の構造をした陰茎海綿体に血液が流れ込み,ペニスが膨張し硬く変化する現象のことです。十分硬くなったときは,「ギンギン」,「フル勃起」,中ぐらいの時は「半立ち」と表現したりします。また,性行為の途中で勃起が消退することを,「中折れ」,「フニャチンになる」と言うこともあります。
朝立ちって何?
朝目覚めたとき,尿意と共にペニス(陰茎)が硬く勃起していることがあることをほとんどの男子は経験しています。そのときパジャマを着ていれば,ズボンのあそこが勃起したペニスで持ち上げられて三角形に隆起しているので,その様子を「テントを張る」,「テントが張っている」と呼んだりします。その気はないのに,「エッチな夢を見て興奮している」とか,「朝から何考えているのよ」と勘違いされそうで恥ずかしいと思っている人も多いようです。だから,そんな朝はテントの張りが目立たないように気をつけ,恥ずかしがり屋の男性は少し腰を引いて布団から起き上がります。そして,寝ている間に溜まった尿を排出すると,トイレを出る頃にはテントはきれいにたたまれています。「朝立ちや小便までの命かな」です。
いわゆる「朝立ち(勃ち)」,医学用語では「早朝勃起(morning erection)」と呼ばれおり,生理的な勃起です。性的刺激による勃起とは区別されています。夜寝ている間に溜まった尿で膀胱が刺激されて勃起したと信じている人もいるようです。確かに「朝立ちや・・・」なのですが,溜まった尿が刺激してそうなったわけではありません。昼間膀胱がパンパンになるまで尿を我慢したからといって,そのたびにテントは張りません。
朝立ちは毎朝あるの?
睡眠には,「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という眠りがあります。ノンレム睡眠は脳が休んでいる深い眠り,レム睡眠は身体が休んでいても脳は覚醒した状態に近い浅い眠りです。これら二つの睡眠は1セット約90分で,睡眠中に交互に繰り返されます。とくにレム睡眠の間には自律神経の働きが活発になり,脈拍や呼吸,血圧などが不規則に変化し,眠っているのに閉じた瞼の下で眼球がキョロキョロ動いたり,男性ではペニスが勃起するなどの身体的活動が行われます。8時間睡眠であれば一晩に5回前後のレム睡眠があり,そのたびにペニスが勃起しているのです。目覚めるときがたまたまレム睡眠時であると,それをテントが張っていると視認することになります。つまり,朝立ち(早朝勃起)は性的な興奮や尿が溜まったことによる刺激で勃起したものではなくレム睡眠中の自然な生理現象なのです。
レム睡眠 | ノンレム睡眠 | |
---|---|---|
眠り | 浅い | 深い |
脳 | 活動している | 休息している |
眼球 | 動く | 動かない |
呼吸 | 増加・浅くなる | 安定・深くなる |
心拍数 | 増加・不規則 | 安定・少なくなる |
どうして夜間に勃起するの?
ところで,みなさんは体力測定で行われる体前屈を覚えていますか。上体を腰から曲げて指先がどこまで達するかを測定して柔軟性を評価する項目です。「昔は柔らかかったけど,今は指が(地面に)着かん」と,以前と比べ身体が硬くなっていることを自覚している人も多いでしょう。どうして硬くなったのかというと,それは柔軟体操を続けてこなかったからです。子どもの運動会の保護者リレーや地区の運動会での徒競走で,足がもつれて転けるシーンを見たことありませんか。頭では早く走っているつもりでも足がついていきません。久しぶりに会社の野球大会に出ても,満足にバットを振れずに三振。「こんなはずじゃなかった」。誰でもこのような経験をお持ちだと思います。
身体は使わなければ衰えます。筋力は低下し柔軟性や協調性も失われます。普段走っていなければ,足をスピーディに前に運ぶことはできません。普段バットを振っていなければ,腰をスムーズに回すことはできません。昔できていたからといって練習なしでは急にできるはずがありません。だから前もっての練習や日頃のトレーニングが重要になります。
勃起とは,ペニスの中にある海綿体に血液が充満し,ペニスが膨張して硬く変化することです。もし勃起させない時間が続けば,それが長ければ長いほど血管や海綿体の柔軟性が低下してしまい,結果血液の流れ込みが悪くなり膨張できなくなってしまいます。これは前述した身体が硬くなったり,急に運動できないことと同じです。勃起にも日々のトレーニングが必要になってきます。
睡眠中のレム睡眠時に繰り返される勃起は,医学的には夜間陰茎勃起(nocturnal penile tumescence)と呼ばれ,これがいざというときのための試運転の役割を果たしていると考えられています。毎日の柔軟体操,運動会前の走る練習,野球でいえば素振りと同じです。男は誰でも人知れず毎夜努力をしているのです。その努力の一端を朝方見かけたからといって変な誤解をしないようにして下さい。
朝立ちがないことは心配なことですか?
レム睡眠時に起こる勃起,その回数は生後すぐでも,青年期でも変わらないといわれています。ただ,その持続時間はテストステロン(男性ホルモン)に比例し,思春期になりテストステロンが増加すると,個々のレム睡眠における勃起時間が延長してきます。テストステロンレベルが最も高い20歳代では,寝ている時間の40〜50%は勃起していることが知られています。そんなに勃起していれば,毎朝テントが張っていてもおかしくありません。やがて,年齢と共にテストステロンが減少してくると勃起時間は短くなり,早朝勃起に気付くことも少なくなってきます。
高校生で,「ときどきしかテントが張らん」,「全然朝立ちがない」という場合は心配です。テストステロンが低い状態かもしれません。そんな話を小耳に挟んだら,こっそり保健室で,二次性徴の状態を尋ねてみてください。陰毛が生えていない,精巣の大きさが指で作ったOKサインの輪くらいの大きさになっていない。そんな時は一度泌尿器科で相談した方が良いかもしれません。
コメント