幼少期を過ごした熊本県天草市の家の向かいには映画館があり、いつも“顔パス”で三船敏郎さんや007シリーズを見ていました。そんな映画少年だった私が最近びっくりしたのは、俳優のリチャード・ギアさんが「70歳でパパに」というニュース。今のパートナーとの間には1歳の男の子がいますが、また男の子が生まれたそうです。
女性は年齢とともに妊娠しづらくなることはよく知られていますが、男性はこうした著名人の影響か「いくつになってもパパになれる」と思っている人が多いようです。
年齢と精液の関係を調査した2013年の論文によると、1回の射精液に含まれる精子数は、34歳を境に減少していくそうです。同様に精子濃度(精液1ミリリットル当たりの数)は40歳、運動率(元気よく動いている精子の割合)は43歳、1回の精液量は45歳が境目。子どもが授からない、2人目ができない、と悩んでいるなら、女性だけでなく男性の年齢も影響している可能性があります。
「だったら、ためればいい」と考える人もいるでしょう。ところが、古い精子ほど遺伝子にダメージを受けていることが最近分かってきました。4日間出すのを我慢すると、精液量や精子数は最大になりますが、その分、妊娠につながりにくい精子も増えるのです。妊活中の男性にとって35歳は曲がり角。パートナーから「今日よ」と言われそうな2~3日前に一度射精して、精子を新鮮な状態にしておくことも大切です。
ところで、子どもの性別は、卵子と受精するのがX染色体を持つ精子(X精子)か、Y染色体を持つ精子(Y精子)かで決まります。男になるY精子の平均的な割合は、女になるX精子の1・06倍。だから実際に男の子が少し多く生まれています。しかし先の論文によると、55歳を境にY精子の割合が減少する。つまり男性が年を取るほど、授かる子どもは女の子の可能性が高くなるというのです。
還暦を過ぎてパパになった世界の著名人を思い浮かべてみると、確かに女の子が多いような気がします。そんな中で、リチャード・ギアさんは70歳で男の子2人。ちょっと、すごい。
(寄稿:2020/06/01付 西日本新聞朝刊)
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