<♪こまっちゃうナ/デイトにさそわれて>。故郷、熊本県天草市にあるレコード店前で、歌う山本リンダさんを見たのは9歳の頃。ミニスカート姿にドキドキしたのを覚えています。
初めてのことなら、<♪初めはみんなそうなんですって>とリンダさんのように笑って見守ってあげればいいのですが、今までうまくできていた人が急にできなくなったのなら、そんなわけにもいきません。
今回は大人のおねしょの話。寝ている間に無意識にしてしまう排尿は、成長とともに改善する場合がほとんどです。「初めはみんなそうなんだよ」と見守って、就学前におねしょをしなくなれば大丈夫。ところが、大人になって突然再発してしまうことがあります。ショックで誰にも相談できず、自信がなくなったり、寝るのが怖くなったり。
夜寝ている間は膀胱(ぼうこう)の緊張が緩み、昼間の1・5倍の尿をためることができるといわれています。また、夜間は脳から出るホルモンの働きで、体内で作られる尿の量が少なくなります。そのため8時間睡眠でもトイレに起きずに済んでいます。
しかし心配事を抱えたり、仕事などでストレスを受けたりすると、昼間と同じ緊張状態が夜間まで続き、膀胱に多くの尿をためることができなくなります。さらに心理的負担や睡眠リズムの乱れがあると、脳からのホルモン分泌が少なくなり、夜間の尿量が減りません。その状態に、睡眠薬の内服、多めの飲酒、便秘、疲労による深い眠り-などが重なれば、大人でもおねしょをしてしまいます。
大人のおねしょはおおよそ100人に1人といわれています。ですが実際はもっと多くの人がひそかに悩んでいるようです。珍しいことでもなければ恥ずかしいことでもありません。心や体が疲れたときは、こんなことも起こります。
ただ大人のおねしょの背景には、糖尿病や甲状腺の病気、睡眠時無呼吸症候群、過活動膀胱、排尿障害、脳の病気などが潜んでいる場合もあります。一人で悩まず「おねしょをしてびっくりした。困っちゃった」と気軽に泌尿器科にご相談ください。
(寄稿:2019/11/25付 西日本新聞朝刊)
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