「青い体験」と聞いて「あ~あれね」と反応するのは、きっと60代、70代の男性。家政婦さんに恋い焦がれる少年の、抑えきれない性欲を描いた1970年代のイタリア映画は、テレビの洋画劇場で放送されるたびに高視聴率を記録したそうです。
「お姉さんに教えてもらっていいな」「ラッキーだ」。その昔、主人公の状況がうらやましいと思ったことを思い出して、ニヤリとする男性が多いかもしれません。ところが、少し状況が異なれば、そういうわけにはいかなくなります。
もし映画の中で、お小遣いを渡す、誘惑する、だますなどの方法で、心身の未熟さに乗じて少年が望んでいない性交をしていたり、または単に自分の性欲を満足させるための対象として少年を扱っていたりすれば、大問題です。本人の意思に反した性交の強要や、児童買春は、犯罪です。
ところで男性の性反応は、ペニスが勃起した後に射精し、快感を得てリラックスすること。エッチな想像をしたり、性的なものを見たり触ったり、または直接ペニスを刺激すれば、性的に興奮して性反応が始まります。通常は自らの性欲が起点になりますが、そうではないこともあります。
苦痛や恐怖を感じ、性欲が起こりえない状況であっても、強制的に刺激を受ければペニスは勃起し、刺激が続けば射精します。だから、たとえ勃起して射精があったとしても、男性の同意があったことの証拠にはならないし、その行為を望んだことにもなりません。
2017年6月の刑法改正で、強姦(ごうかん)罪は強制性交等罪1)となり、男性の被害者も含むようになりました。男性が男性に、または女性が男性に、性交を強いた場合も罪に問えるようになったのです。
「男性が性被害に遭うはずがない」「もし遭ったとしても抵抗して防げるはずだ」は社会の間違った思い込み。男性も性被害に遭うことがあり、それはその人が弱いからではないこと、被害に遭えば男性も女性と同じように苦しむこと、その苦しい気持ちを相談していいこと。それらを理解していただきたいと思います。
1) 2023年7月より、強制性交等罪と準強制性交等罪を一本化して、不同意性交等罪に改正されました
(寄稿:2019/12/16付 西日本新聞朝刊)
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