ずいぶん昔、中学の修学旅行のバスの中でのこと。「みんなの質問に答えます」というイベントで、ガイドさんに尋ねたいことをそれぞれが匿名でカードに記入しました。<何歳ですか?><芸能人は誰が好きですか?><趣味は何ですか?><好きな食べ物は何ですか?>。中学2年生のたわいない質問に軽く答えていたガイドさんが、次の質問を目にして、はにかみました。「口ひげが濃いの、どう思うかって? う~ん。男らしいんじゃない」
実はこれ、私の質問です。口の周りがひげで黒っぽくなり、妹から「泥棒みたい」とからかわれて、気にしていたのでした。
思春期になると陰毛、脇毛が生えてきます。体毛も大人への体の変化の一つです。通常、女性の陰毛はパンツに隠れますが、男性の中にはパンツの上まではみ出してしまい、どこまでが陰毛でどこからがへそ周りの毛なのか区別が付かない人がいます。
以前、アイドルの水泳大会で西城秀樹さんの競泳用水着から豪快にはみ出ていた体毛を見て、その状態を松任谷由実さんが「ギャランドゥ」と命名したとか。ひげや胸毛、ギャランドゥという俗語が定着したへそまでつながる陰毛は、女性の何倍も多く分泌されている男性ホルモンの働きによって、男性だけに生える体毛です。だから、その部分に男らしさを感じていいなと思ったり、男臭さを感じて毛嫌いしたりします。
思春期の男子にうっすら口ひげを認めたときは、男性ホルモンが増えてきている証拠です。パンツの中を見なくても、オチンチンが発育して陰毛が生えていることが推測できます。順調な思春期の変化で、大人の体までもう少しの段階です。バスガイドさんがはにかんだのは、中2男子の質問に、大人の男性への変化を想像したからだったのかもしれません。
もし、中学卒業までにうっすら口ひげが生えないときや、成人後に胸毛やギャランドゥが減り、ひげの伸びが遅くなったときは、男性ホルモンに異常があるかもしれません。泌尿器科にご相談ください。
(寄稿:2019/10/21付 西日本新聞朝刊)
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