2024/05/20 思春期に「思春期までに・・・」を投稿いたしました

女性も歩道を歩けるように

 2017年5月、自宅で出産した赤ちゃんの遺体を手提げかばんに入れて出頭した16歳の女子高校生が、死体遺棄容疑で逮捕されました。望まない妊娠が引き起こした悲しいニュースの中で、父親である男性のことは一切触れられていませんでした。

 性行為には大きなリスクが伴います。望まない妊娠と性感染症です。ただ男性は妊娠をしないので、このリスクを人ごとと思っている人は少なくありません。実際、知らんぷりをする男性は多く、女性だけが体の変化から逃げることもできず、全責任を背負い込んでいる現状があります。

 性感染症にも、男性に比べて女性の方が感染しやすく、重症化するとされています。理由は性器の構造の違いです。女性の性器は膣(ちつ)粘膜の総面積が広く、精液中の病原体が滞留しやすい構造になっています。病原体を洗い流せば感染の危険性を減らすことができますが、簡単に洗える男性のペニスと異なり、女性の場合はそうはいきません。いったん感染すると外陰部、膣、子宮、卵管、骨盤腔(くう)へとおなかの中まで感染が広がる危険性があり、重症化します。

 たとえ両思いでお互いが性行為に納得しているとしても、手をつないで歩いている場所は、男性だけが常に歩道で、女性は常に車道を歩いているようなものなのです。危険性には大きな男女差があります。性は男女不平等です。

 女性が歩道を歩けるようにするために、どうすればいいのでしょう。男性は性行為のリスクを全て女性に押し付けるのではなく、そのリスクを小さくできる方法を行動で示すこと。そして結果から逃げ出さないことです。具体的には、コンドームを正しく使う▽性感染症の心配があるときは、医療機関で早めに検査する▽性感染症が治るまで性行為を控える▽妊娠という結果に寄り添う-です。

 男女がそれぞれの性の特性を理解し、その上でお互いの性を尊重し、お互いを思いやる心を持ち、思いやる行動ができるようになること。それが一番大切だと性教育の出前授業で中高生に伝えています。

(寄稿:2019/04/29付 西日本新聞朝刊)

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