2024/05/20 思春期に「思春期までに・・・」を投稿いたしました

ぶ〜らぶらには意味がある

 たん、たん、たぬきの○○は風もないのにぶ~らぶら。男性にとってとっても大切な精巣(睾丸(こうがん)、金玉)。それを入れている袋を陰嚢(いんのう)(金玉袋)と呼びます。

 陰嚢の働きは、精巣の温度調節をすることと精巣を衝撃から守ること。精巣が精子を作るためには、体温より2~3度低めが適しています。温度が上がると働きが弱くなります。そのため、体の外に垂れ下がっている袋の中で精巣はぶらぶらしているのです。

 陰嚢は、気温が低いときには縮こまり、体温や気温が高いときにはだらりと伸びる、伸縮自在の性質です。体温の影響を受けすぎないよう、精巣と体の距離を調節して精巣を適温に保っています。また、陰嚢の皮膚には汗腺が多いのでよく汗をかきます。しわしわなのは、表面積を増やして熱を放出するためです。夏は股間も熱くなる。股間が蒸れやすいのは、精巣の温度を適温に保つために陰嚢がせっせと働いている証拠です。

 あるとき、身長180センチ超、体重120キロ超の男性が不妊の相談で受診されました。「気を付け」「休め」の姿勢が多いお仕事です。この体格ですから「休め」の姿勢でも太ももが陰嚢を挟み、精巣へ体温が伝わっています。その影響か、精液検査では精子数が極端に減少していました。そこで「休め」のときは足幅をより広く、歩くときは少しがに股気味に、とアドバイスしたところ、2カ月後には精子数が正常な数に増加しました。

 24時間連続で陰嚢温度を測定してみると、歩いているときが最も低く、車の運転やデスクワークなど同じ姿勢で長時間座っているときが温度は上昇しています。もちろん長風呂やサウナでも上がりますし、ラップトップ型パソコンを膝の上で使うのは要注意です。

 男性は精巣を温めすぎないようにすることが大切です。デスクワークの多い人は、机の下では足を組まずに膝を広げましょう。そして1時間に1回は立ち上がって歩きましょう。「行儀が悪いぞ」「何をしているんだ」と注意を受けたら、「ただいま放熱中です」と答えれば、きっと上司も見逃してくれるはずです。

(寄稿:2018/08/27付 西日本新聞朝刊)

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追記

日常生活で,どのようなときに精巣は熱にさらされるのでしょうか。今までにいろいろな実験が行われています。

実験①:精液所見が正常だった10名が,週2回80〜90度のサウナに15分間入ることを3か月間続けた。

結果:精子数の減少,精子運動率の低下,DNAが正常な精子数の減少がみられた。なお,サウナに入る習慣を中断後6か月で,これらの悪化した精液所見はすべて正常化した。

みのDr

妊活中の人は、しばらくサウナは控えた方がいいようです

実験②:21〜35歳の健康な男性9名に40分間歩行させた後,車を160分間運転してもらい,陰嚢の温度変化を調べた。

結果:運転開始120分後には,歩行しているときと比べて1.7〜2.2℃の温度上昇がみられた。

みのDr

長時間の車の運転やデスクワークも精巣には悪い影響を与えます。
1時間ごとに立ち上がったり、足の屈伸をしたり、車から降りて休憩をとりましょう!

実験③:21〜35歳の健康な男性29名に,膝の上にノートパソコンを置いて60分間作業してもらう。(1)膝を閉じて座り,ノートパソコンを膝の上に置いて使用,(2)膝を閉じて座り,膝の上に置いたpadの上でノートパソコンを使用,(3)膝を70度ほど開き,膝の上に置いたpadの上でノートパソコンを使用。

  • 結果
  • (1)陰嚢温度は0.91〜2.56℃上昇した。温度が1℃上昇するまでの時間は11分。
  • (2)陰嚢温度は0.69〜2.18℃上昇した。温度が1℃上昇するまでの時間は14分。
  • (3)陰嚢温度は0.62〜1.47℃上昇した。温度が1℃上昇するまでの時間28分。

実験④:健康男性50名に2種類の下着をつけ,45分間歩いたり,座ったりした後に陰嚢温度を測定した。

結果:ブリーフのようなタイトフィットの下着を着けているときの方が,トランクスのようなゆったりとした下着を着けているときに比べ,精巣の温度が上昇した。

実験⑤:健康男性20名,肥満男性20名に陰嚢温度を24時間連続で測定した。

結果:1日平均温度は,健康男性34.73℃,肥満男性35.58℃だった。健康男性の陰嚢温度は1日のうちで変動があり,睡眠中は高く,日中で上昇するのは,車の運転中や仕事で座っている時,寛いでいるときなど,同じ姿勢で長時間座っている時だった。歩いているときは下がっていた。肥満男性の陰嚢温度は,ほとんど変動がなかった。

精巣に熱刺激を与えると精子数の減少や精子運動率の低下など精巣の働きが悪くなります。そしてこの悪影響は数か月間持続します(実験①)。だから,精巣を良い状態に保つためには,できるだけ熱刺激を減らすことが大切です。

そこで,日常生活で気をつけることは,

  • 座りっぱなしにならない,60分に1回歩き回る
  • 座るときは,足を組まない。膝を広げる
  • ラップトップコンピューターは,膝の上で使わない。使ったとしてもpadの上で30分まで
  • パンツはゆったりトランクスタイプ,または,ふんどし
  • サウナ,長風呂は控えめに
  • 肥満の人は減量

「肩までつかって,百数えて上がりなさい」。子供の頃,お風呂でいつも言われていました。湯冷めしないために,充分体が温まってから上がるようにという親心なのでしょう。けれども早く上がってテレビを見たいので,10をすばやく数える方法「だるまさんがころんだ」を10回言って急いで上がっていました。これでは体が温まるはずがありません。温まったかどうかの一つの目安は,陰嚢です。垂れ下がっていなければまだまだです。だらりとなれば,それなりに温まっているはずです。そろそろ上がる潮時かもしれません。その後ももう少しもう少しと浸かっていれば,精巣の温度が上がりすぎてしまいます。長風呂にはご用心。

みのDr

男の体を健康に維持するためには精巣を暖めすぎないようにすることが大切です。
だから,たぬきだけではなくて人の股間も“ぶ〜らぶら”です。風がなくてもぶらぶらさせて歩きましょう。

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