♪いい湯だな/いい湯だな/湯気にかすんだ白い影/あの娘(こ)かな
混浴は日本の温泉の風情の一つ。わくわくしながら入ったものの、男ばかりでちょっとがっかり。そんなとき私は、お湯から首だけ出して女性が入ってくるのを待ち続ける男性、通称「ワニ」と勘違いされないよう、そそくさと浴場を出るようにしています。
一方、家庭での親子入浴は日常的に行われています。一緒にお風呂に入れば、親が子どもの体を観察し、大人の体へ成長しているかどうか確認することができます。子どもも親の体を見ることで、大人の体への変化を自然なこととして受け入れやすくなります。親子入浴にはこのような大切な一面があります。
シャワーで汗を流すだけの欧米と異なり、風呂にゆっくり漬かる入浴文化を持つ日本では、父と娘、母と息子という異性親子の入浴もある年齢までは許容範囲とみなされています。では、子どもが何歳までならOKなのでしょうか。
女子は小学4、5年生、男子はおよそ1年遅れで思春期を迎えます。児童心理学の専門家に言わせると、胸の膨らみなどの二次性徴が現れるその時期に、男と女は違うものという意識を育てる必要があり、タイミングを見誤ると、年頃になっても、家族を含め誰に裸を見られても恥ずかしさを感じない状態になりかねないとのこと。いつまでも親子混浴を続けると、異性との適切な距離を保つことができなくなる可能性があるのだそうです。
子ども自身が異性浴場を恥ずかしいと思い始める年齢は6〜7歳が多いという調査結果から、20年12月厚労省は、これまでの「おおむね10歳以上の男女を混浴させないことと」としていた年齢制限の指針を、実に70年ぶりに「おおむね7歳以上」に引き下げました。これを受け、公衆浴場で男女が混浴できる年齢を定めた条例を改正する自治体が増えてきました。
女子は小学4、5年生、男子はおよそ1年遅れで迎えていた思春期は、最近の子どもの発育の早期化から、より早くなってきています。もし胸の膨らみ始めた女の子が男湯にいたら、男性はそわそわ。女子はイヤイヤ。もし女湯で陰毛が生え声変わりしている男の子から体を見られたら、女性はドギマギ。男子はドキドキ。だから昔ながらの混浴温泉を除き、公衆浴場での混浴は、思春期前の6歳までがOKになったということです。
家の風呂でも、思春期の体の変化に気付いたら、その時が親子混浴を止める潮時です。
(寄稿:2020/05/04付 西日本新聞朝刊)
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